スピンフラストレーションとマルチフェロイックス

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S = 5/2カゴメ格子ハイゼンベルグ反強磁性体KFe3(OH)6(SO4)2の強磁場多周波ESR
 
 KFe3(OH)6(SO4)2(K-Fe-jarosite)はスピンの大きなFe3+(S=5/2)が磁性を担うカゴメ格子反強磁性体である。これまで理想的なカゴメ格子の化合物の報告は極めて稀であったが、K-Fe-jarositeは理想的なカゴメ格子を有し、mmオーダーの単結晶の合成に成功している。つまり、K-Fe-jarositeは数少ない理想的なモデル物質で、スピン量子数の大きなハイゼンベルグカゴメ格子反強磁性体の実験研究に大変有用なサンプルであると言える。そこで我々は、理想的なハイゼンベルグカゴメ格子反強磁性体について摂動項の効果まで詳細に検証することを目的に、K-Fe-jarosite単結晶の強磁場多周波ESR、磁化測定を行い、それらの実験結果の解析を試みた。図2に示すように転移磁場16テスラ当たりで磁化の跳びが観測されているが、これは挿入図に示すモデルのように磁気モーメントがカゴメ格子面から少し傾いていて、それらが低磁場では格子面交互に上下に傾いている状態にあるのが、転移磁場以上ですべて磁場方向に傾いた状態に変わったと考えた。今回の解析では、ジャロシンスキー・守谷(DM)相互作用(実線)と結晶場(CF)に基づく異方性(破線)によって計算を行い、DM相互作用の計算結果においてESRと磁化の実験結果と良い一致が見られた(図1)。このように我々はカゴメ格子反強磁性体であるK-Fe-jarositeについて磁場変化について定量的な解析に成功し、DM相互作用が異方性の起源である事を確かめることができた。本研究は科学研究費基盤研究(B) (No.20340089) 及び、文部科学省グローバルCOEプログラム「物質の量子機能解明と未来型機能材料創出」の支援の下に行われた。

Reference
[1] T. Fujita et al., Phys. Rev. B 85 (2012) 094409.